キリスト発言と騒動の真相【その2】からの続き
キリスト発言の炎上は、インタビュー記事が3月4日に出てから4ヶ月後の7月に一部分をイギリスの夕刊紙が引用し、それをアメリカの雑誌が掲載してから始まる。
やがて、アメリカをはじめ世界中のキリスト教を国教とする国のラジオ局がビートルズの曲を放送禁止とする騒動に発展していく。
ビートルズのレコードは焼かれ、メンバーと家族、関係者には度重なる脅迫状や殺害予告が届くようになる。
放送禁止の動きは最初は地方のラジオ局から始まりアメリカ全土に広がっていった。
レコード販売と印税を主な収入源となるミュージシャンにとって、放送禁止はとても重い処分だ。
当時は、ラジオでどれだけ新曲が流されるかがヒットの鍵だった。それも特定の曲というならまだしも、この時はビートルズの楽曲すべてが対象になったのだ。
近年の事件を起こしたタレントがテレビの画面から消える日本の放送自粛も同じシステム。要は業界を支配するものが、タレントの生殺与奪権を持っている。資本主義のひとつの特徴だ。だから民主政治の観点からも、メディアにこそ独占禁止法は厳密に運用されなければならないのだが。
アメリカの雑誌に掲載された7月29日の直後に、まるでビートルズをアメリカで放送禁止にすることは、決まっていたことかのように始まり、あっという間に広がっていく。
この1週間後の8月5日にビートルズは最新アルバム『リボルバー』と両A面でのシングル「イエロー・サブマリン」と「エリナー・リグビー」の発売を控えていた。
3月にイギリスで掲載された時に、ニューヨーク・タイムズがこのキリスト発言を含むインタビュー記事を配信している。その時はまったく問題にならなかったのに。。。
それがこのタイミングになったのは、この『リボルバー』という新しいアルバムに収録された曲にあったからではないか。
そして、その曲は間違えなく『エリナー・リグビー』だと思う。
陰謀論的に解釈すると、彼らにとって都合の悪い何かがこの曲にあって、それが広まることを抑えたかったのか。
あるいは、気に入らないところがあって頭に来たので困らせてやろうとした、かのどちらかだと思う。
後のジョン・レノンのような悲惨な末路となる場合は見せしめということもある。
今回はそこまでは至らずこの年のアメリカツアーの終盤で演奏中に、観客の悪戯で爆竹が鳴る。
バンドのメンバーやスタッフは誰もがジョン・レノンが撃たれた銃声だと思って、ジョンの方を見た。幸いジョン・レノンも誰も負傷したという様子はなく、演奏は続けられた。
当時の状況を考えると子供の悪戯というのは冗談キツ過ぎで、ビートルズのメンバーを脅すことが目的だったはずだ。
『エリナー・リグビー』はビートルズのメンバーが誰一人楽器を演奏していない。
シングルにもなったメジャー作品で、こんな曲は後にも先にもこれ1曲だけだ。
ポール・マッカートニーがリードボーカルを担当し、曲も歌詞もほとんど彼が書いたというのと、歌詞の大部分を自分が書いたと主張するジョンレノンと完全に見解が割れている。
楽曲への貢献度について(しかも重要な歌詞と内容について)、ここまでふたりの主張に乖離があるものも他に見当たらない。
©︎ 2023, Raizo