「エリナー・リグビー」の真実【その2】からの続き
本国イギリスでは、「エリナー・リグビー」はアルバム『リボルバー』と同時に「イエローサブマリン」と両A面シングルで発売された。一方で、アメリカでは「エリナー・リグビー」はB面にしかなっていない。
「イエロー・サブマリン」はイギリスではそれまで続けていたシングル曲1位の記録を更新するが、アメリカでは2位止まりとなる。
アメリカでのレコード販売記録を管理するマッチ・ボックスでも、このシングルは現役のその時に発売した22枚のシングルの中の20位と奮わない。
そして、『リボルバー』にいたっては、アメリカ版の収録曲は11曲とイギリス盤の14曲から3曲も削られる。
なんと、その3曲はいずれもジョン・レノンの作品だ。
そしてその削られた”I’m Only Sleeping’’、“And Your Bird Can Sing”’、“Doctor Robert”は、『リボルバー』発売の2ヶ月前の6月に、アメリカで発売された編集盤「イエスタデイ・アンド・トゥデイ」に収録されている。
そして、この6月にアメリカで発売された「イエスタデイ・アンド・トゥデイ」のジャケットが、物議を醸す。
白衣を着たメンバー4人が笑いながら手にしているのは、バラバラになった赤ん坊の人形と動物の肉片。このジャケットは、発売後にすぐに回収され差し替えられる。
陰謀論者ならこのバラバラになった赤ん坊に、アドレナクロムの闇を見ないわけにはいかない。
すでに出回ってしまったものや、初版のカバーに上からシールで新たなカバーを貼り付けたものを剥がした差し替え番を含めて、ブッチャー(精肉店)カバーと呼ばれ、今も物凄い高額で取引されている。
そして、このアルバムカバーのデザインについて、マネージャーのブライアン・エプスタインが反対をしたにも関わらず、ジョン・レノンとポール・マッカートニーのふたりが強固に、その採用を主張しているのだ。
3月の親しい女性記者によるインタビューでのジョン・レノンのキリスト発言。6月にリボルバーから先行して発売され、すぐに回収となる「イエスタデイ・アンド・トゥデイ」のジャケットのデザイン。そして、8月のアメリカツアーに合わせて発売されたシングル「エレナー・リグビー」の歌詞に込められた、教会がペドフィリアの隠れ蓑になっているという隠された真実。
ペドフィリアにしても、アドレアクロムにしても、近年では多くのことが公式な形で情報開示されている。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/カトリック教会の性的虐待事件
日本ではジャニー喜多川の件がそうだ。すでに陰謀論ではなく、長年隠されてきた真実がメディアで取り上げられるようになった。
しかし、60年代の半ばに、世界でもっとも人気のあるミュージシャンであるビートルズが、さまざまな方法で、この隠された真実を世界に向かって訴えようとしていた。
ビートルズは長きにわたり現代音楽とサブカルチャーのメインストリームで抜きん出た存在として、影響を与え続けている。そのことも、また違った角度から見えてくるのではないだろうか。
そして、この1966年時点のビートルズは、ジョン・レノンただ一人が、急先鋒となってこんな無謀な戦いを仕掛けているわけではない。
バンド全体、特にポール・マッカートニーとはしっかりタッグを組んで、この極めて困難で、リスクのある戦いに挑んでいっていることが、あらゆるところで見てとれるのだ。
ブッチャーズ・ジャケットの件では、ポール・マッカートニーは、ベトナム戦争への反対の意味も含めて、このジャケットでのリリースをジョン・レノン以上に主張している。8月にはじまる米国ツアーで、キリスト発言についての記者会見が行われるのだが、ここでもポール・マッカートニーはフロントマンとして矢面に立つジョン・レノンを庇うように率先して厳しいインタビューに対応している。
残念なことに、この強力なタッグは、ビートルズに関する陰謀論でもっとも有名なポール・マッカートニー死亡説で言われる、自動車事故でポールが死んだとされる1966年11月を機になくなっていく。
そう、筆者は、この観点からもポール死亡説はあながち偽りではないのと見ている。
©︎ 2023, Raizo